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〜教育魅力化コーディネーター「保小連携」担当・太田さんインタビュー〜

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〜教育魅力化コーディネーター「保小連携」担当・太田さんインタビュー〜

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教育委員会の担当者と談笑する太田さん(右)

 津和野の教育の歴史は古く、江戸時代まで遡ります。当時の津和野藩校「養老館」は、藩士の教育機関として人材育成に大きく貢献しました。養老館出身者には、日本に西洋哲学を普及させた西周、文豪の森鴎外、国学者で歌人の福羽美静など、明治政府で活躍した著名人を多数輩出。そして現在も、地域みらい留学制度の導入で県外からも生徒の受け入れをしている津和野高校、町営塾HAN-KOHの設置など、ユニークな取り組みで人材育成に力を入れています。

 津和野町は令和3年度より「0歳児からのひとづくり事業」を掲げ、学校や保育所の壁を越えたタテの繋がり、地域や家庭や行政といったヨコの繋がりのある環境づくりを目指し、すべての住民が協働して取り組む「0歳児からのひとづくり」を推進しています。

 その事業の一環を担い、教育魅力化コーディネーターとして保小連携に取り組む一般財団法人つわの学びみらいの太田幸輔さんにお話を聞きました。

教育魅力化の「保小連携」というのはどういった取り組みですか?

 津和野町には、幼稚園がなく、7つの保育園と4つの小学校があります。保育園は町の健康福祉課、小学校は教育委員会の管轄で、どの地域でも校種によって縦割り構造になっているため、保育園から小学校への「教育の引き継ぎ」が課題でもあります。
 子どもたちが保育園で学んだことを小学校へしっかり引き継いでいけるよう、組織の「連携」に取り組んでいます。連携がうまくいくことで、子どもたちの多様性に配慮した、主体的で対話的な深い学びができる教育環境が実現できると思っているからです。

 教育魅力化コーディネーターは各地にいますが、私のように「保小連携担当」は全国でも唯一かと思います。

 津和野町のみならず、保育園では一人一人に合う伸び伸びとした子育ての事例も増えてきていますが、いざ義務教育の小学校へ上がると、一人一人の多様性よりも「均一化」したプログラムが主流になっているのが現状の日本の教育であり課題でもあります。

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木部地区の保育園年長児と小学校1・2年生合同による体育授業の様子

 

今後予定している「保小連携」の取り組みはありますか?

 令和4年度の文部科学省の「幼保小の架け橋プログラムに関する調査研究事業」の公募に津和野町としてプログラムを提案し、全国19自治体のモデル地域の1つとして採択されました。今後3年間、本事業に取り組みます。

 この事業は、子どもに関わる大人が立場を越えて連携し、架け橋期(義務教育開始前後の5歳児から小学校1年生の2年間)にふさわしい学びの実現と生活の基盤を育むことを目指し、各採択自治体ごとにプログラムを提案するものです。

 津和野町では、保小連携コーディネーターと幼児教育コーディネーターを核としながらも、外部の有識者にも参加してもらい、保育園から繋がる教育、学びを作っていきます。

 私自身、津和野町の出身ではなく、縁もゆかりもありませんでしたが、長男が年少児となるタイミングもあり、保小連携事業に取り組みたくて神奈川県鎌倉市から家族と共に移住しました。津和野町には「山のこども園 うしのしっぽ」という標高400メートルの牧場に園舎のある保育園があります。山の上の豊かな自然環境で過ごすことで、子どもたちが五感を研ぎ澄ませて伸び伸びと育つことができるという、とてもユニークな「森のようちえん」です。

 私には息子が3人いて(3人目は津和野町生まれ)、子どもたちを育てる親という立場でもあり、ジブンゴトとして教育のあり方を模索しています。津和野町では「うしのしっぽ」を含め、7園それぞれ特色ある保育の場はありますが、保育園時代に培われた学びや経験を義務教育課程へどう接続すればいいのか。「保小連携担当」の教育魅力化コーディネーターとして、この課題に取り組みたいという思いで働いています。

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標高400メートルにある保育園「うしのしっぽ」で過ごす園児たち

 「保小連携担当」として移住する前は、何をされていたのですか?

 ブータン、タイ、日本と3か国で10年間、学校の教員をしていたので、津和野町へ移住する前から教育には携わっていました。子育てには積極的に関わりたかったこともあり、移住前は育休を取らずに会社を辞めて子育てに専念した時期もありました。

 自分の子どもたちとこれからどう育っていきたいかと考え、預けたい園や住みたい場所を全国で探す中で、移住先を津和野町に決めました。10年来の仲間が先に暮らしていて、「津和野では面白い教育をやっているよ」と人伝で聞き、教育委員会に繋いでもらったのがきっかけです。

 移住1年目は教育委員会で採用していただき、2年目から現職の一般財団法人つわの学びみらいで働いています。

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太田さん一家。長男はタイ生まれ、次男は東京生まれ、三男は津和野生まれ

太田さんが想い描いている目指すべき理想の教育環境は?

 今の子どもたちが生きていく未来の社会は、更に多様化が進み、さまざまな価値観を持った人々と共生していく社会です。ですので、そのような社会において、自分らしく主体的に生きられ、周囲の人々と協力し合える環境を作っていきたいと考えています。シンプルに言えば、子どもたちの「パッション」があふれている場が理想です。

 もちろん、集団生活や規律を守る教育も大事な側面があると思いますが、「個別最適」な要素をもっと盛り込んで子どもたちの可能性を広げていきたいです。小学校に上がった瞬間から土固めに入るのではなく、もっともっと土を耕して、根っこが深く広く伸びていく環境にすることで、その先にどんな種(良いものも、困難なものも)が撒かれても大丈夫な土壌を育むことが大事だと思います。

 そのためには、大人たちの意識改革 / アンラーン(学びほぐし)が必要です。
私が子どもだった時代から、日本も世界も社会は大きく変わりました。働く環境も選択肢も自由になりつつありますし、ダイバーシティやインクルーシブの時代だと思っています。

 しかしながら、教育現場は昔とほとんど変わらないというのが実態です。今の子どもたちが現代社会で生き抜く大人になるために、教育自体をアップデートしていく必要があります。

 これまでの教育にも、もちろんメリットはあります。海外に出ていたから感じる部分もありますが、例えば、学習の進捗具合が全国統一であるため、国内のどこへ移住しても取り残されることがないという点です。また、体育や図工、家庭科といった学び=いわゆる情操教育が担保されている点についても非常に優れています。これは、世界でも類を見ないと思います。一方で、学校に行かない選択をする子どもも増えていて、これまでの教育だけではそのような子どもたちとどのように向き合っていくかという課題の解決は難しいのではないでしょうか。

 義務教育で習う教科書通りの指導が、大人になって自立し生きる上で本当に必要な内容なのかどうかと問われると、どうかな?と疑問に思うところはあります。通信簿や点数・数字を稼ぐことだけが学習なのでしょうか。社会に出て輝ける大人になるためには、もっと違うアプローチも必要なのではないかと考えています。

 国内には、長野県伊那市立伊那小学校のように先進的な取り組みをする公立学校もあります。伊那小では探究型総合学習に取り組み、60年間通知表も時間割もチャイムもなく、子どもたちの主体性を尊重する教育を実践しています。先生の異動も数年ごとにある中で、しっかりと組織の文化が引き継がれているのです。

 「0歳児からのひとづくり事業」を掲げている津和野町では、「大人になっても自ら学び続ける人」を町のスローガンにしているので、大人の意識改革を含めて、もっともっとユニークな教育を実現するための場づくりやコミュニティづくりに取り組みたいと思っています。

教育事業以外でも「まちおこし事業」に取り組んでいるのですか?

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津和野初のクラフトビール事業にも取り組む

 もともと津和野町への移住は「教育によるまちづくり」のアプローチが目的でしたが、教育改革はとても長期的な取り組みです。もっと短期的に成果を出し、まちにインパクトを残し、まちを盛り上げたいという想いもあり、クラフトビール事業を始めました。

 単純に、ビールが大好き!という理由も背景にあります(笑)。
そのために、町内で合同会社Beを起業しました。AだけではなくてBでもいい、ありのままの自分自身で!という思いを込めて社名を付けました。クラフトビールづくりを通して「表現できる場づくり」に取り組みたかったのと、誰かと比べるものではない「創作活動」を形にしたいと思って立ち上げた事業です。

 津和野初のクラフトビールとなった「Be HAPPY(ビーハッピー)」と「Be CRAZY(ビークレイジー)」は、津和野感ゼロで作りました。迷彩柄などのラベルでストリート感を出した地ビールで、話題性先行での創作です。

 3種類目となる次のクラフトビールは、津和野感を出したいと思っています。

 そして今後は、津和野のクラフトビールを飲めるスペース作りも構想しています。津和野は林業も盛んなので、廃材を使った遊び場など家族と一緒に来て楽しめる場所にしたいです。

 ここに来れば何か化学反応がおこるような、ワクワクしたアートな空間にしたいですね。

【参加企業募集】津和野町で進出検討する企業向けの現地視察ツアー

津和野町に本社移転またはサテライトオフィスやテレワーク・ワーケーション施設の立地や開設を検討する企業を対象に、現地視察をコーディネートします。

「都会とは違う地方でこそ、地域の社会課題に寄り添いながら事業を拡大したい。新しい社会事業に取り組みたい」

そんな企業の経営者に、まずは津和野に来て、津和野を見て、津和野を体験してもらいたいと思っています。

現地にお越しになる前に、今後の展望やご要望などをオンラインでヒアリングします。その上で、適切な現地視察のスケジュールを調整し、企業訪問やオフィスや住まいの候補先探し、ハローワークなど人材紹介機関のご案内などを1泊2日の行程で企画提案します。

令和4年度中の早期進出(もしくは進出確定)を検討している企業については、現地視察に関する旅費交通費の補助を行っています。詳しくは下記のエントリーフォームにご記入の上、ご相談事項をご記載してください。

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