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〜教育魅力化コーディネーター・玉木さんインタビュー〜

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〜教育魅力化コーディネーター・玉木さんインタビュー〜

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 島根県立津和野高等学校、通称「ツコウ」では地域みらい留学制度を導入し、県外からの生徒も受け入れています。ツコウの敷地内には町営塾HAN-KOH(ハンコウ)が設置されるなど、全国に先駆けてユニークな取り組みをしています。津和野町出身者には文豪・森鴎外や哲学者・西周などの歴史的な偉人も多く、彼らは津和野の藩校「養老館」の出身者でもあり、昔から教育に力を入れてきた町としても知られています。津和野といえば「学びの町」、と言っても決して過言ではありません。

 この町で、民間の立場から子どもたちの教育や育成に携わり、その延長で起業もされた玉木愛実さん(一般財団法人つわの学びみらい「教育魅力化コーディネーター」/一般社団法人津和野まちとぶんか創造センター 代表理事)に、津和野へIターン転職をした背景やこれまでの取り組み、これからのことについてお話をお聞きしました。

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津和野町の中心地にある玉木さんの起業した職場かつ交流スペース

津和野へIターンする前は、何をしていたのですか?

 津和野へ移住する前、新卒で『MilK Japon』というファッション、インテリア、食、アート&カルチャーを取り扱った、フランスのライフスタイル情報誌の日本版編集者として働いていました。そこで出合う外国人の小さな子どもモデルやその家族との接点が、転職を考えるきっかけとなりました。

 また、当時の編集長が立ち上げたリサーチ&デザインスタジオに転職した際、会社が掲げていたのが「リサーチ・デザイン・エデュケーション」の3つの軸で、「エデュケーションって何だろう? 教育で自分が何かできることはあるのか」と考えるようになりました。

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玉木さんが編集者時代に手掛けていた当時の雑誌『 MilK Japon』

 ファッション系情報誌ということもあり、モデルを務める子どものキャスティングを担当することが多く、現場に来る子どもたちが落ち着いて撮影に臨める環境をつくらなければいけませんでした。まだ小さな子どもなので、お母さんの後ろに隠れて出て来なかったり、ギャンギャン泣き叫んだり、お菓子をひたすら食べ続けたりとハプニングが多く、円滑に進行するためには子どもたちとの信頼関係を築くのが何よりも重要でした。モデル事務所や親たちとの対応もあり、出版社を辞めた今でもSNSで繋がっている家族もいます。編集部での大変だったと同時に楽しかった思い出を振り返ったとき、私は子どもたちの成長を間近で見て、サポートすることにやりがいを感じるのではないか、と気づいたのです。

 「教育」に関心が高いことは認識したものの、私は外国語大学の出身で教員免許は取得していなかったので、教員でなくても教育に関わることのできる仕事を探していたところ、たどり着いたのが津和野でした。

津和野に来たきっかけと当時の仕事について教えてください。

 教員免許がなくても学校の近くで働ける場所を探して、求人情報ウェブサイトで「学校 そば 働く」で検索をかけたら、津和野の求人が出てきたのです。「なんだこれ?」と半信半疑でしたが、その求人は当時、津和野町が地域おこし協力隊の運営委託をしていた企業の募集ページでした。ただ、その時は記事を読んでも津和野で何をやっているのか、さっぱりわかりませんでした(笑)。その後、実際に津和野に来てみたのですが、それでも正直理解できませんでした(笑)

 そんな状況で、具体的に「自分に何ができるのか」「どういう街なのか」の知識もないまま、ただ「教育には携われる」という淡い期待で移住を決意したのです。私は東京生まれ東京育ちで東京しか知らなかったので、津和野は外国みたいな感じでした。都会の生活が自分のスタンダードでしたが、そうではない生活にも憧れがあったのも事実です。

 津和野に移住し、地域おこし協力隊としての最初の任務が「HAN-KOH(ハンコウ)」でした。HAN-KOHは津和野町が運営する町営塾で、高校生と中学生が対象ですが、基本的には私は中学生の担当をしました。

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地域おこし協力隊としてHAN-KOH中等部で活動していた頃

HAN-KOHではどのような取り組みをしていたのですか?

 HAN-KOHは、島根県立津和野高校の敷地内にあります。放課後に開設している町営塾です。都会にあるような受験勉強だけのための進学塾ではなく、生徒一人一人の希望に応じて伴走するオーダーメイド型の津和野町運営の塾です。もちろん、大学進学に向けて受験勉強をしたい生徒がいれば勉強のサポートをします。毎日開いていて、自習室で黙々と勉強をする生徒もいれば、講師が開講する講座を受けることもできます。講座は英語に特化したものもあれば、数学や哲学対話といったものもあります。また、時折外部の講師を招いてワークショップもしています。

 私が担当していた中学生向けのHAN-KOH(HAN-KOH中等部)は、開講当初は津和野エリアしかなく、車で20分ほど離れた日原エリアの生徒にとっては放課後の行き来が大変だったこともあり、日原エリアにも拠点を作りました。

 HAN-KOH中等部で英語を教えていましたが、中学校の英語の授業でも毎週1〜2回程度サポートを行いました。
 ただ、中等部担当だからといって高等部や高校に全く関わらないのではなく、例えば津和野高校の「総合的な探究の時間」や文化祭「ツコウ祭」のサポートも行い、垣根を越えた関わりを意識していました。

 また、子どもたちの教育サポート以外に、先生たちの働く環境の改善企画も実施しました。教育魅力化統括コーディネーターの中村純二さんと取り組んだ企画で、津和野高校の職員室改善プロジェクト「センセイオフィス」です。スイスの家具メーカー「ヴィトラ」と協働して、働き改革の一環でオフィス環境改善をしました。先生の多忙感を軽減し、生徒とのコミュニケーションが取りやすい、開放的で交流が生まれやすいオフィスを目指したものです。

 皆さんがイメージする職員室は、印刷物や書類などが山積みになっている光景を思い浮かべるのではないでしょうか。先生たちにはできるだけ書類を積み上げず、減らせる物は減らしていただき、ロッカーに収納できる書類にとどめるようにお願いしました。スペースを開放することで、心理的にもスッキリと余白が生まれます。

 就業規則を新たに設けて働き方改革を実践する方法も聞きますが、環境を変えることで業務効率を図ることも、とても大切な取り組みだと思います。

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以前の職員室(上)と新しい「センセイオフィス」(下)

任期を終了した今、津和野での仕事とこれからの目標を聞かせてください。

 地域おこし協力隊の任務を終えた時、東京に戻るか起業するしか選択肢がありませんでした。私はすごくラッキーで、ちょうどそのタイミングに津和野町の教育魅力化事業を行う「一般財団法人つわの学びみらい」が立ち上がり、そちらに転職しました。たまたま空きがあった教育魅力化コーディネーター枠での採用でした。

 これまでは町営塾の中等部スタッフとして活動していましたが、転職で高校魅力化コーディネーターにシフトしました。しかし、入社した途端に新型コロナウイルスが発生し、とても大変なタイミングでした。

 現在の主な仕事の一つとしては、「地域みらい留学」制度を利用して県外から津和野高校へ入学する生徒の募集業務です。コロナ以前は、対面形式のイベントで募集をしていましたが、完全にオンライン型へ移行しました。「地域みらい留学」制度は全国的にも浸透し始め、生徒確保の競争も一段と厳しくなってきています。“津和野高校らしさ”を出さないといけないと実感しています。

 津和野高校では、総合的な探究の時間で「T-PLAN」というプログラムを設計・運営しています。このプログラムはカリフォルニア大学のバークレー校で実践していたものを参考につくったものです。生徒の「一歩」を後押しするさまざまな体験や気づきの機会を与えることがミッションのプログラムです。

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高校生が学校外の拠点として学び・交流する「TAGO HOUSE ANNEX」

 一般財団法人つわの学びみらいでの仕事の他に、一般社団法人津和野まちとぶんか創造センター(TMC)を立ち上げて、その代表理事としての活動も始めています。TMCのミッションは「津和野の歴史的・伝統的文化と呼応する『独創的・創造的な学びの文化』をいかに生成するか」で、学校や行政ではできないことを、民間として取り組みたいと思っています。現在、津和野町の中心地にガラス張りのコミュニティスペース(TAGO HOUSE ANNEX)を作って、「高校生が安心して居られる場所・学べる場所」を提供しています。

 学校の中でどんなにユニークで活気的な取り組みをしても、学校に拠点がない地域住民には活動内容自体が分かりづらいと思うのです。地域の人たちにも、高校生たちが日常的に過ごしている交流の場をある意味「さらす」ことで、高校生の活動への興味関心や理解を得られればと願っています。最近では町の人から「今日も高校生がたくさん集まっているね」とか、「(夕暮れのスペースに)灯がともっているのはいいよね」などと言われることも増えました。住民が高校生の活動を見守ってくれる、そんな場になっています。

 私は「つわの学びみらい」で教育魅力化コーディネーターとして働いているので、日頃から高校生にさまざまな相談をされる機会も多く、このコミュニティスペースがそんな高校生たちがふらっと入ってきて、心の拠り所になってくれているのではないかと思います。

 空き家だったこの場所を活用し、町に開いていくことで、人の流れが生まれることが十分に検証できました。これからは、学びというキーワードを中心に据えながらも、さまざまな世代・立場の方が気軽に立ち寄れる場の創造に挑戦したいと考えています。

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ガラス張りの「TAGO HOUSE ANNEX」は、地域の方にも好評

【参加企業募集】津和野町で進出検討する企業向けの現地視察ツアー

津和野町に本社移転またはサテライトオフィスやテレワーク・ワーケーション施設の立地や開設を検討する企業を対象に、現地視察をコーディネートします。

「都会とは違う地方でこそ、地域の社会課題に寄り添いながら事業を拡大したい。新しい社会事業に取り組みたい」

そんな企業の経営者に、まずは津和野に来て、津和野を見て、津和野を体験してもらいたいと思っています。

現地にお越しになる前に、今後の展望やご要望などをオンラインでヒアリングします。その上で、適切な現地視察のスケジュールを調整し、企業訪問やオフィスや住まいの候補先探し、ハローワークなど人材紹介機関のご案内などを1泊2日の行程で企画提案します。

令和4年度中の早期進出(もしくは進出確定)を検討している企業については、現地視察に関する旅費交通費の補助を行っています。詳しくは下記のエントリーフォームにご記入の上、ご相談事項をご記載してください。

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