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教育フォーラムを終えて

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8月20日、津和野町教育フォーラムを開催し多くの方々にご参加頂き、実りある会となりましたことを改めてお礼申し上げます。
オープニングトークでは、私もパネリストとして参加し、「多様性を認めあえる町をつくるには?」というテーマにしたがって自らの思いを語らせて頂きましたが、45分という短い時間の中でもあり、後から発言を振り返りながら、明瞭簡潔に思いを表現することが出来なかったと力不足を痛感しております。
そんな反省から、本日は当日の発言を振り返りながら、補足も加えより丁寧に思いを述べさせて頂きたいと思っております。
オープニングトークでのファシリテーターを務めて頂きました「つわの学びみらい」宮本先生による津和野高校魅力化の活動の紹介を受けて、私からは魅力化による生徒増に向けた様々な取り組みにおいて、地域おこし協力隊制度を活用した外部からの人材が重要な働きをしたことをお話しいたしました。
地域おこし協力隊は、最終的に本町に定住して頂くことが理想ではありますが、名称の通り「地域おこしに協力する人材」と考えて、定住は二の次の目標として受け入れることも大切だと考えておりました。
むしろ3年程度の期間限定であることによって、定住の制約が重荷にならないことが、チャレンジ精神を促し、優秀な人材が集まる要因にもなると思っております。
実際に、都市部の大学生や大学院生、社会起業家を目指す20~30歳代の若者が数多く本町に赴き、高校魅力化だけでなく、農林業や商工業、福祉などの分野で町のために奮闘してくれました。
外からの若者は、町づくりに従事することで自らのキャリアアップを図ること、本町においては、町を活性化するために必要だと言われている「若者、よそ者、ばか者」という、地域のしがらみや固定観念にとらわれず、創造力と情熱をもった人材の確保につながるという、いわゆるウインウイン(Win-Win)の関係を築くことが出来たと思っております。
そして「地域おこし協力」の任務を終え都市部の元の地や新天地へ赴く者と入れ替わり、また新しい人材を本町に受け入れながら、取り組みを継続し、進化させてまいりました。魅力ある高校として全国から入学者が集まって頂けるようになった今の成功は、学校関係者のご努力の賜物であることは言うまでもありませんが、これらの取り組みによる成果とも言えると認めております。
最近、「関係人口」という言葉が当たり前のように聞かれますが、本町に入って来てくれた若い人材はまさにその見本であり、3年程度の任務を終えて本町を離れた若者も、新しい赴任の地において、様々に本町の町づくりに関係してくれております。
この度の教育フォーラムにおいても、北海道から駆けつけてくれた懐かしい顔に出会い、感激したところでもありました。
もちろん、良いことばかりではありません。完璧な人間はおりませんので、チャレンジする過程においては様々な紆余曲折を経てまいりましたし、また、本町での活動になじめず、十分に力を発揮できずに帰ってしまった方もおられます。
そして、そのような状況に触れながら、「腰かけですぐこの町を離れてゆく者に、どうしてお金をかける必要があるのか」といった厳しいご批判を受けることがあったのも事実です。
行政の立場として税金を使わせて頂いている私たちは、無駄遣いとならないよう、来てくれた若者全員が、本町の町づくりにおいて十分な成果を出して頂くために、しっかりとフォローをして行かなければならない責任があります。
ただ、悪いことばかりに目を向け、外からの人材全体に厳しい批判をするような事態になると、社会が閉鎖的になり前向きで優秀な人材を受け入れるチャンスさえも閉ざしてしまうことになりかねないと心配をしてしまいます。
津和野高校魅力化の成功は、学校関係者をはじめ本町の多くの方々が外からの人材を受け入れ、その個性と情熱を認めながら共に活動を展開して頂いたことにより実現できたとも考えております。合わせて、チャレンジにおいての失敗を許容する環境も大切だと考えます。
失敗をしても反省し町づくりに挑戦し続けることで、失敗が次につながり、成功の要因ともなります。
「まちづくりは人づくり」と教わってまいりました。失敗から学ぶことでそれが人づくりに、そしてまちの活性化につながって行くものであり、失敗を許容することも大切です。多様性とは、失敗をした事実や人を受け入れ、認めることでもあると思います。
教育フォーラムにおいて上映された映画「みんなの学校」はまさにそのことが体現されていたと感じております。
以前に過疎地域の活性化に向けた研修会に参加しましたが、この中で、日本の人口が2100年には5千万人を切る推計もなされている状況において、過疎地域は人口減を認めながら、地域に対しての当事者意識を持った人材を増やすことを目指すべきだとのお話を聞きました。
そのためには、意欲を持った地域住民と外から入ってくる人、そして関係人口等の多様なプレイヤーが、にぎやかに活動することができるコミュニティが必要であるとのことです。
そのことが、人口減だが元気な地域へ、そして地方創生につながって行くというものであります。
人口減は経済の縮小をもたらしますので、過疎の更なる進行と地域の衰退につながるとの懸念も生じますが、元気で輝く過疎地域には経済の新しい仕組みが生み出されているとも言われております。
仕事の場、雇用の場がある地域よりも、これからは何かしら新たな仕事を創出することができる土壌に意識や志の高い人が引き寄せられるのであり、だからこそ多様な人材が混ざり合い、活動する地域が魅力を生んで行くというものです。
もちろん、地域づくりは時間がかかるものであり、地道な積み重ねが必要であるということでもありました。
そのような観点から本町を顧みたときに、子どもから大人までの地域住民やUターンで故郷に帰ってこられる人、そして「若者、よそ者、ばか者」をはじめとしたIターンで来て下さる人などの多様な人材が混ざり合い、その個性を発揮しながら認め合い、活躍するコミュニティを創って行くことを目指してまいりたいと考えております。
津和野高校魅力化の取り組みはその一つの成功例だと思っておりますし、現在ではその成果を更に発展させるために「0歳児からのひとづくり」による教育の魅力化に取り組んでおります。
また、町内の様々な民間組織においても、外からの多様な人材を受け入れ、特色ある活動を活発に展開され実績をあげられております。
町としても、地域提案型助成事業のような活動支援の助成制度なども充実するとともに、多様な組織とその輪の内外で多様な人が、失敗を含めた実績を認め合いながら、次のステップへと更なる進化を遂げて行くよう、施策を展開してまいりたいと思います。
まちづくりを楽しむことのできる、当事者意識をもった人材が輝きあって頂けることが私たちの希望であります。
そのためにも、これからはサイレントマジョリティという方々に声を発して頂くことが大切であると思っております。サイレントマジョリティに対してノイジーマジョリティという言葉が用いられますが、決して批判的な意見を発する方を少数派として判断し疎んじているわけではありません。大切な意見の一つとして受け止めることも重要であることは間違いありませんが、批判的な意見ばかりが目立つようになってしまうと、社会が委縮し、前向きな人材を育む環境から逆方向に進んでしまうとの危惧をもっております。
悪いことばかりに目が向いては良い部分が伸ばせないとの観点からも、批判的な意見と同時に肯定的な意見も発せられることで、活発な議論が形成され、多様性のある社会が広がり頑張ろうとする人材が増えると思います。
そのためにも、これまでサイレントであった方々が、良い点に目を向けた意見を出して頂けることをお願いしたいと思っております。
最後に、今一度、過疎地域活性化のための研修会を振り返りますと、これまでは都市と地方の格差が問われてきたが、これからは地方の地域と地域の間の格差が生まれるというお話でした。
そして、その格差を生む要因は前向きの人が多くいる地域と愚痴の人が多くいる地域の差にあるとのことです。
こうした指摘を受けとめながら、本町においても多様性を認め合いながら、前向きな人材が光り輝き合う地域づくりを更に進めることで、「0歳児からのひとづくり」をはじめ町の活性化を図ってまいりたいと思います。
尚、「若者、よそ者、ばか者」という言葉を用いましたが、不快に受け止める方がいらっしゃったかもしれません。前向きな姿勢を表す意味で、一般的に言われている言葉を肯定的な表現として引用したものであり、ご了承ください。

教育フォーラム1 教育フォーラム2

教育フォーラム3 教育フォーラム4

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