〈シンポジウム開催あいさつ〉
《日 時》 平成30年12月1日(土) 13時30分~16時20分
《会 場》 津和野町民センター(津和野町後田殿町)
《テーマ》 「哲学思想史から見た西周」
《主 催》 島根県立大学 津和野町
《プログラム》
◆あいさつ 下森博之津和野町長
◆基調講演 黒住真(くろずみ・まこと)氏(東京大学名誉教授)
「日本の哲学思想における西周の意義」
◆第1回西周賞授賞式
◎ 受賞者 藤野真挙(ふじの・なおたか)氏
(韓国・東義大学校人文社会科学大学日本語学科助教授)
論文「西周の法思想と教思想~思慮ある激怒が蠢(うごめ)く秩序~」
◎ 審査講評 樺山紘一(かばやま・こういち)氏(印刷博物館館長/西周賞選考委員長)
◎ 賞状賞金授与 プレゼンター/津和野町長
◎ 受賞者スピーチ 藤野真挙氏「西周の『近代』秩序構想」
〈基調講演 黒住真氏〉
《概 要》
このシンポジウムは、津和野町出身の啓蒙思想家西周先生(※注)の顕彰と研究の推進を目的として、島根県立大学の西周研究会が中心となって毎年開催しているもので、本年で16回目です。今回は、初めて島根県立大学と津和野町の共同開催の形で行われ、メインテーマには「哲学思想史から見た西周」が掲げられました。
総合司会は島根県立大学北東アジア地域研究センター長の李暁東(り・ぎょうとう)氏が担当しました。冒頭、下森町長があいさつを述べ、歓迎の言葉と西周生誕190周年となる来年への決意を表明しました。
続いて、東京大学名誉教授の黒住真氏が「日本の哲学思想における西周の意義」と題した基調講演を行いました。
黒住氏は、「現在、哲学は狭くなり、個別論にのみ結び付いてあまり意味が見えない」と指摘したうえで、「元来哲学は西周がとらえるように、学問や理性の基礎に関係し、東洋西洋を越えたものだった」と述べ、大西祝(おおにし・はじめ)(1864~1900/哲学者)の説や、その他の資料を駆使しながら、西周思想の現代における意義などについて研究成果を披露しました。
次に、今年初めて津和野町が中心となって創設した「西周賞」の授賞式が行われました。この賞は、対象を若手(40歳以下)研究者に限定したユニークなものです。
記念すべき第1回受賞者は、現在韓国の東義大学校の助教授を務めている藤野真挙氏(36歳)、論文タイトルは「西周の法思想と教思想~思慮ある激怒が蠢く秩序~」でした。なお、藤野氏はこの授賞式出席のために韓国から駆けつけました。
下森町長から賞状と賞金が授与されたあと、論文の選考委員長を務めた樺山紘一氏が講評を行いました。樺山氏は、現在作業が進行中の「西周新全集」の代表編集委員も務めている日本を代表する研究者の一人です。講評では、西周賞が自治体主導によって創設されたことに大きな意義があること、応募のあった7つの論文はどれも粒ぞろいで選考では活発な議論が交わされたこと、選考にあたっては特に「第1回」の意義を重視したこと、などが述べられました。
〈授賞式のようす〉 〈選考委員長 樺山紘一氏講評〉
続いて、西周賞受賞者の藤野氏が「西周の『近代』秩序構想」と題したスピーチを行いました。
藤野氏はまず、自分が日本近代思想史の研究に進んだきっかけは、大学院時代に出会った西周の教育思想だったという思い出を振り返ったあと、西周が創ろうとした日本の新しい社会秩序は、彼の法と教の思想から読み解くことができる、と受賞論文の骨子を解説しました。
最後には、約50名の出席者の中からも質問や意見発表があり、3時間近くにわたったシンポジウムは午後4時過ぎに閉幕しました。(文責:山岡浩二)
〈受賞者 藤野真挙氏〉
(※注)西周(にし・あまね/1829~1897)
啓蒙思想家、教育者、男爵。津和野に生まれる。幕臣としてオランダに留学し、帰朝後は開成所教授や最後の将軍・徳川慶喜の側近的ブレーンを務める。明治維新後は福沢諭吉らと結成した「明六社」を本拠として啓蒙活動を展開。「哲学」をはじめ「主観、客観、帰納、演繹、理性」など多くの言葉を訳創出した。軍制の整備にも尽力し、日本の近代化に大きく貢献した。宮内省・参謀本部・文部省各御用掛、東京学士会院会長、東京師範学校校長、元老院議官、貴族院議員など。
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