会社を解雇されたり,給料が支払われなかったりするなど、会社(事業主)と個々の従業員との労働関係に関するトラブルを個別労働紛争といいます。
個別労働紛争を解決する手続には、裁判所や労働局、弁護士会など複数の機関に様々なものがありますが、各手続にはそれぞれ特徴があり,紛争の実情等を踏まえてどの手続を利用するのが良いのかを検討することが大切です。
労働関係に関するトラブルはいろいろあります
裁判所では、裁判(民事訴訟)手続をはじめ、地方裁判所における労働審判手続、簡易裁判所における少額訴訟手続や民事調停手続など、一般国民から選ばれた労働関係の専門家が関与して実情等を踏まえた解決を図る手続があります。
労働審判手続
労働審判手続は、裁判官1名と労働関係の専門家である労働審判員2名が労働審判委員会を構成し、原則として3回以内の期日で、話合いによる解決を試みながら、最終的に審判を行う手続です。
訴訟手続と同様に権利関係を明らかにした上で進める手続のため、事前に証拠等を準備し、主張を的確に行う必要があります。したがって、法律の専門家である弁護士に依頼することが望ましいでしょう。
審判に不服がある場合や事案が複雑で争点が多岐にわたるなど、この手続を行うことが適当でないと認められる場合などには,訴訟手続に移行します。
少額訴訟手続
少額訴訟手続は,原則として1回の審理で判決がされる特別な訴訟手続で、60万円以下の金銭の支払を求める場合にのみ利用することができる手続です。
少額訴訟手続の中で話合いを試みる際に,一般国民から選ばれた司法委員が関与することがあります。
原則として1回の審理で終わることから,比較的単純な事案の解決に有用な手続であり,手続を利用する場合には,証拠等の事前準備が必要となりますが、自分1人でも手続を行うことができます。
少額訴訟手続の判決では,分割払や支払の猶予を定めることもできます。なお,相手の方が少額訴訟の手続によることに反対した場合等には、通常の訴訟手続に移行します。
民事調停手続
民事調停手続は、裁判官又は調停官1名と一般国民から選ばれた調停委員2名以上で構成される調停委員会のあっせんにより、簡易な事案から複雑困難な事案まで実情に応じた話合いによる解決を図る手続です。
訴訟手続と比べて手続が簡単で、必ずしも詳細な主張書面や証拠が必要とされるわけではありませんし、弁護士や社会保険労務士等の調停委員が関与することもあるため、自分1人でも手続を行うことができます。
相手の方が話合いに応じなかったり、合意に至らなかったりするときは、手続が打ち切られることがありますが、裁判所が相当と認める解決案を示すことがあります。
裁判所の手続を利用する方へ
裁判所における個別労働紛争を解決する手続には、ご紹介した手続以外にも、裁判(民事訴訟)手続、仮処分手続、支払督促手続等がありますが、各手続の特徴と紛争の実情等を踏まえてどの手続を利用するのが良いのかを検討することが大切です。
各裁判所の窓口には、裁判所における各種手続を分かりやすく説明したリーフレットのほか、少額訴訟手続の訴状や調停申立書などの定型用紙も備え付けてあり、手続の概要や申立ての方法について説明を受けることもできます。
また,裁判所ウェブサイトでは、各種手続をより詳しくご紹介しており、定型書式の一部についてダウンロードすることもできますので、どうぞご利用ください。
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