ごあいさつ

安野ワールド「美術館」は宝箱
 
 津和野は山々に囲まれた美しい町、安野さんのふるさとです。この津和野が生んだ天才は幼いころ「山の向こうには何があるのか」と、まだ見ぬ世界に想いを馳せ、様々に想像を膨らませたといいます。
 その津和野に私も通い続けて20年を超えました。安野さんが自慢するとおり、四季折々の美しさは感動的です。桃源郷を想わせる春の花々、その見事な量感は半端ではない。夏の日の蛍の乱舞も圧巻。そして、冬の気配が近づくころの早朝、大地を覆う雲海は城跡を隠すが、日出によって雲散すれば、言われるところの『天空の城』が現出します。そして冬の到来。「新雪の山道」はまるで絵画の世界、私の心に美しい景観として刻印されました。えも言われぬ自然の演出に加えて、津和野には四季を彩る様々な行事があります。春の日の「流鏑馬」。夏の日、小さな子供たちが舞い踊るかわいらしい「子鷺の舞」。大人たちの「鷺舞」。よそ者の私にとって、それはそれは「美しい」の言葉でしか言い表せないものです。
 幼い日々の安野さんの感性を育てた津和野は、今、安野さんの美術館を大事に守り続けています。小学生時代に学んだ思い出の教室が、美術館の中に再現され、訪れる人々を懐かしさとともに子ども心に立ち返るよすがとなっております。そして、空想することの楽しさと科学的視野を広げるためにと、館内にはプラネタリウムを併設。美術館に新しい学びの場を提供しています。
 美術館に収蔵される作品は4000点を超え、春夏秋冬季節に合わせた展示が行われ、また、全国の美術館とも協力をして巡回展も行っております。来館者の多くが、安野さん独特の作品世界に引き込まれ、緻密な画面構成に圧倒されながら、そののびやかな絵の中で遊ぶ楽しさを知ることになります。展示作品には、キャプションとして安野さんのメッセージが添えられ、これもまた味わい深く心に響きます。
 2001年3月にオープンした美術館も、もうすぐ20周年という大きな節目を迎えることになります。宝箱のような美術館をどのように見ていただくか、美術館スタッフ一同原点に返って、心砕く毎日が続いています。
                

                                                                 安野光雅美術館館長 大矢鞆音

 

 
  

安野光雅(あんの・みつまさ/1926〜)

 大正15年3月20日、島根県津和野町に生まれる。生家は宿屋を営んでいた。昭和7年津和野小学校へ入学。絵が大好きな少年であった。
 昭和14年、津和野を離れ宇部高等小学校へ転校。昭和20年4月招集、同年8月15日香川県王越村(現坂出市)で終戦を迎える。昭和23年4月代用教員として徳山市加見小学校(現周南市)に勤める。
 昭和25年3月美術教員として上京、玉川学園に勤める。その後、三鷹第五小学校、武蔵野第4小学校の美術教師を勤める。教員のかたわら、本の装丁などを手がける。
 出版社等の仕事が多くなり昭和36年教師を辞めて画家として独立。昭和43年、文章がない絵本「ふしぎなえ」で絵本界にデビュー。その後、その好奇心と想像力の豊かさで次々と独創性に富んだ作品や淡い色調の水彩画で、やさしい雰囲気漂う風景を描いた作品などを数多く発表し続けている。
 また「ふしぎなえ」、「さかさま」、「ABCの本」、「旅の絵本」などの多くが海外でも評価が高く、様々な国で出版され多くのファンをもつ。
 その才能の豊かさは、芸術の世界だけにとどまらず、科学・数学・文学などに造詣が深く、著作も多く、最近では、森鴎外訳「即興詩人」を口語訳した「口語訳 即興詩人」がある。また「日曜喫茶室」や「週刊ブックレビュー」などのレギュラーを務めるなど幅の広い活動をしている。
 平成13年(2001)年3月20日、安野光雅さんの75歳の誕生日に、故郷津和野の駅前に「安野光雅美術館」が開館、本年3月で10周年を迎えた。
 また多くの業績に対し、ブルックリン美術館賞(アメリカ)、ケイト・グリナウェイ賞特別賞(イギリス)、BIBゴールデンアップル賞(チェコスロバキア)、国際アンデルセン賞画家賞、紫綬褒章、第56回菊池寛賞など国内じめとする数々の賞が贈られている。
 代表作には「ふしぎなえ」、「ABCの本」、「天動説の絵本」、「旅の絵本」、「繪本 平家物語」、「繪本 三國志」や司馬遼太郎の紀行「街道をゆく」の装画などがある。



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