ごあいさつ

 2001年3月20日、安野光雅先生の75歳の誕生日。その日、「津和野町立安野光雅美術館」が開館致しました。津和野町内の小学1年生が手にした、色とりどりの風船が白壁の美術館を背に、ゆらゆらと澄み切った青空に舞い、新しい美術館の誕生を祝ったのです。
 あれから十年。美術館はさまざまな展観を季節に合わせて開いてまいりました。そして実に多くの方々に、ご来館いただきました。新しい展示のたびに東京新宿から深夜バスで母子二代、ご来館くださった方もあり、スタッフ一同感激したことを、決して忘れません。 そして今年は早いもので開館十周年を迎えました。10周年を記念しての巡回展が、島根県立美術館から始まります。それを期して美術館も新しい十年に向けて出発です。
 津和野で育った安野先生の小学校時代の想いを込めた「津和野町立安野光雅美術館」は小学校の教室、図書室、プラネタリウムが備えられております。そこには先生の強い想い、メッセージが込められているのです。「小学校時代の教養があればともかく生きることが出来る」。「本を読む習慣を子供のとき、身につけておりさえすれば、かなしいことや、くるしいことなど、どんなことがあっても、あとはなんとかなるのです」。
 そういった先生の想いをなんとかお伝えしたいと美術館では努めてまいりました。絵本作品、世界各地の風景作品、そして添えられたエッセイ。絵だけでもなく、エッセイだけでもない画文それぞれが醸し出す深い味わい、作品の秘めた奥深さをお伝えしたいと願ってきました。
 先生の、その想いを十分お伝えできたかはわかりませんが、大事な子供時代を大切に過ごしていただきたいという想いは、我々スタッフも持ち続けております。
 新しい十年に向けての新しい旅立ちが始まります。安野作品が持つ、幅広い、多彩な世界。それぞれに込められた先生の想いを、どのようにお伝えするのか、どのように展示したらよいのか、一生懸命考え、来館される方々に親しまれる美術館を目指していきたいと考えております。

館長 大矢鞆音

 

 
  

安野光雅(あんの・みつまさ/1926〜)

 大正15年3月20日、島根県津和野町に生まれる。生家は宿屋を営んでいた。昭和7年津和野小学校へ入学。絵が大好きな少年であった。
 昭和14年、津和野を離れ宇部高等小学校へ転校。昭和20年4月招集、同年8月15日香川県王越村(現坂出市)で終戦を迎える。昭和23年4月代用教員として徳山市加見小学校(現周南市)に勤める。
 昭和25年3月美術教員として上京、玉川学園に勤める。その後、三鷹第五小学校、武蔵野第4小学校の美術教師を勤める。教員のかたわら、本の装丁などを手がける。
 出版社等の仕事が多くなり昭和36年教師を辞めて画家として独立。昭和43年、文章がない絵本「ふしぎなえ」で絵本界にデビュー。その後、その好奇心と想像力の豊かさで次々と独創性に富んだ作品や淡い色調の水彩画で、やさしい雰囲気漂う風景を描いた作品などを数多く発表し続けている。
 また「ふしぎなえ」、「さかさま」、「ABCの本」、「旅の絵本」などの多くが海外でも評価が高く、様々な国で出版され多くのファンをもつ。
 その才能の豊かさは、芸術の世界だけにとどまらず、科学・数学・文学などに造詣が深く、著作も多く、最近では、森鴎外訳「即興詩人」を口語訳した「口語訳 即興詩人」がある。また「日曜喫茶室」や「週刊ブックレビュー」などのレギュラーを務めるなど幅の広い活動をしている。
 平成13年(2001)年3月20日、安野光雅さんの75歳の誕生日に、故郷津和野の駅前に「安野光雅美術館」が開館、本年3月で10周年を迎えた。
 また多くの業績に対し、ブルックリン美術館賞(アメリカ)、ケイト・グリナウェイ賞特別賞(イギリス)、BIBゴールデンアップル賞(チェコスロバキア)、国際アンデルセン賞画家賞、紫綬褒章、第56回菊池寛賞など国内じめとする数々の賞が贈られている。
 代表作には「ふしぎなえ」、「ABCの本」、「天動説の絵本」、「旅の絵本」、「繪本 平家物語」、「繪本 三國志」や司馬遼太郎の紀行「街道をゆく」の装画などがある。



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