本館は、日夜変貌をとげている国内外のさまざまな出来事を、写真を通じて身近に紹介する場として設置されました。
 その主旨にそって、写真は、一瞬の出来事から忘れてはならない歴史の痕跡までを忠実に記録している報道写真という分野を、本町出身で、報道写真家として第一線で活躍されている桑原史成氏の写真を中心に展示しています。
 私たちの記憶の奥に埋没している歴史の一コマーコマを、来館者の皆さまが、展示写真からその記憶に再現していただけたら幸いです。

桑原 史成
くわばら しせい
 
 
桑原史成写真展 第1期

『フィリピン』
-黄色い革命-

2024.4.19~2024.7.17
※休館日:木曜




                                                  ©桑原史成1987
 桑原史成写真美術館の今回の展示は「フィリピン」を展示します。
 
フィリピンは台湾の南方、約200kmで東アジアにありながら西洋のヨーロッパを思わせる風土、気質の国です。日本の戦国時代にスペインが植民地化(1565~1898年)し、続いて米国が代わって統治(1898~1946年)した異質な歴史の国です。
 最近では、米国において米・日・比の間で防衛と経済問題について、初の首脳会談が行われました。中国の軍事的な脅威に対応する会談です。フィリピンからはマルコス大統領、バイデン米大統領それに岸田首相で、中国の南シナ海での海洋進出への対応が議題だったのです。前政権のドゥテルテ大統領が進めた中国への経済の依存度を解消し、防衛は米国に、経済では日本の協力を受ける狙いがありました。その一つは半導体のサプライチェーン(特にニッケル鉱物・調達)があります。フィリピンのこの政策の転換は、歴史的な節目と言えます。これから中国の反発が起きるのは想像に難くない事でしょう。
 僕がフィリピンを本格的に取材したのは、戒厳令が解け民主化運動が胎動した1987年の事です。マルコス政権(現大統領の父、母はイメルダ夫人)が崩壊し、「黄色い革命」と言われた女性大統領のアキノ政権に移行する激動期でもありました。フィリピンを撮影していて、スペイン系の末裔をいたるところで見掛けたものです。このたびの展示は、日本から近い隣国の素顔と苦悩を垣間見た写真です。

                                  報道写真家 桑原 史成
SHISEI KUWABARA MUSEUM OF PHOTOGRAPHY