朴槿恵(パク・クネ)大統領は、任期満了(2018年2月)まで1年余を残して「秩序と名誉ある辞任」の意を2016年11月29日に表明した。
 1ヶ月余前の10月24日、韓国の新聞系ケーブル局(朝鮮テレビ)が次の内容の番組を放映した。大統領の演説原稿や閣議資料などを友人の崔順実(チェ・スンシル)女史(後に被告)が入手したしていた、と報道した。この暴露から、韓国の社会、世論は急速に変わっていった。ことに野党とそれを支持する労組の人たちや首都圏(ソウル)の市民で、ソウルはデモの街と化した。毎土曜日は「大統領退陣」のデモで最大時は100数十万人(主催者発表)ともいわれ、警察発表30万人余。それは島根県の人口約70万人を上回る。ちょっと頭を傾げたくなる・・・。
 ぼくが1960年代から半世紀余にわたって取材してきた激動期の韓国では、学生や労働組合員デモといえば投石と火炎ビンが常套で、対峙する警察機動隊は放水と催涙弾で鎮圧していた。それが、今は歌声と提灯、それに幼い子どもを連れた親もいて、お祭りの夜のようにも映りデモの様相が以前と大きく変化していることに驚かされた。1960年代から中国で起きた文化革命にも似た現代版の韓国政治劇で、人々は火に油を注ぐかのように集まる様は、まるでラテン系の民族のように情熱的である。若者にとっては就職難や広がる格差などの韓国社会に不満があるに違いない。
 この1ヶ月の政治の混迷は、野党にとって千載一遇の好機の到来で、最大野党「共に民主党」を中心に現大統領の即時退陣と国会に弾劾訴追の決議案が12月9日に可決された。朴大統領はその席に留まりながら、職務停止でいわば失職である。次に憲法裁判に判決を待って来春に次の大統領選挙が行われよう。
 混迷を深めている韓国は、韓流ドラマに映るような安寧の風土ではない。同じ民族で国土分断の朝鮮半島は、一触即発の臨戦態勢下である宿命は現在も変わらない。ソウルの巷では親北(平壌)と反日と掲げる野党と“世論”が勝利すれば北朝鮮による祖国統一が実現する可能性も少なくない。歴史の推移は読めない。ひょっとすると韓国軍部による軍事クーデターが起きないとは断言できない。
ご高覧、ありがとうございました。

                                       報道写真家 桑原史成

 本館は、日夜変貌をとげている国内外のさまざまな出来事を、写真を通じて身近に紹介する場として設置されました。
 その主旨にそって、写真は、一瞬の出来事から忘れてはならない歴史の痕跡までを忠実に記録している報道写真という分野を、本町出身で、報道写真家として第一線で活躍されている桑原史成氏の写真を中心に展示しています。
 私たちの記憶の奥に埋没している歴史の一コマーコマを、来館者の皆さまが、展示写真からその記憶に再現していただけたら幸いです。

桑原史成
くわぱらしせい
        

 次回は「北朝鮮−いま、アジアの“異端児”」
H29.4.20〜H29.7.19
 第4期展 「激震・韓国−分断国家の苦悩」
H28.12.16〜H29.4.18
H29年4月19日(木)は作品の入れ替えのため休館します。
※今期より展示替えの期間を変更します。

SHISEI KUWABARA MUSEUM OF PHOTOGRAPHY