平成18年度展示スケジュール
年間テーマ「安野光雅 繪本の世界」

春期展 平成18年3月10日(金)〜平成18年6月7日(水)


開館時間:通常 09:00〜17:00(最終入館16:45)
入館料:
大人800円(650円)中高生400円(250円)小学生250円(100円)
           ( )内は20名様以上の団体料金
   
 ・第1展示室
  展示ブース1 「繪本・歌の旅」 
  展示ブース2 「壺の中」 

 ・第2展示室  
   「繪本平家物語」



第1展示室
「繪本 歌の旅」

 安野光雅の新著「繪本 歌の旅」(2005年11月22日/講談社発行)に収録されている作品原画46点を展示します。
 この「繪本 歌の旅」シリーズは元々、「読書人の雑誌 本」(講談社発行/月刊誌)の2002年7月号から2005年12月号の表紙装画として描かれたものです。
 『シリーズ日本の唱歌』として連載された作品は、「仰げば尊し」や「春の小川」など誰もが口ずさめる歌をはじめ、「カチューシャの唄」「城ヶ島の雨」など各地に縁が深い歌などを多様に取り上げています。安野は自らの思い出の歌を胸に日本各地を訪ね、歌の雰囲気を絵として表現しました。
 唱歌には、作詞者の歌詞に込められた想いとともに、「冬景色」や「紅葉」など私たちに身近な自然について感性豊かな描写がなされています。安野の作品からも日本の山海で四季折々に見られる美しい自然の風景、また自然と共生する人間の息遣いが感じられます。
 安野は「子どものころうたった歌は、そのころの空気といっしょに密封されていて、ちょうど缶の蓋を開けたとこのように、その時代のいろんな時間などといっしょになってもどってくる」(「繪本 歌の旅」あとがきより)と述べています。きっと観る人ひとりひとりが持っている思い出にも反響することでしょう。



「壺の中」

 安野光雅は数学や科学にも関心が深く、その興味を作品として表してきました。「壺の中」(童話屋発行)は安野が中心となり創作された絵本「美しい数学シリーズ」の第4弾です。作は安野雅一郎、絵は安野光雅による共作です。
 「ある小さな壺の中に1つの島があり、その島には2つの国があり、2つの国にはそれぞれ3つの山があり、3つの山にはそれぞれに4つの城がありました・・・」とのように話は進みます。この話の数字だけを残して考えていくと数学が展開されていることがわかるでしょう。
 「数学」と聞くと何となく苦手意識を持つ方も多いと思います。この作品では、私たちの身近な世界中での数学が表されており、数学の世界を具体的に楽しく考えることが出来る内容になっています。
 「自然が美しいように、数学も美しい。そのはずなのにこの頃は、入学試験と、それに適応しようとする教育のためか、数学は誤解されて、ひどい嫌われものになってしまった。でも本当は、だれかさんのように、美しい。昔は女神にたとえられたくらいだった。その姿をのぞき見るために、私達の本が少しでも役に立つといいのだけれど」、安野のそのような思いも込められています。



第二展示室
「繪本平家物語」

 「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響あり…」、安野はこの有名な書き出しから始まる古典「平家物語」をもとにして「繪本・平家物語」という作品を描いています。
 この作品は、平家物語の原典を読み込んだ安野が、自ら感じた平家一門の栄華と滅亡の歴史を、七年余りの歳月をかけて完成させた81点からなる大作です。
 絹地に墨や岩絵具で着彩するという日本画の手法が用いられ描かれた作品は、安野が描く他の水彩画作品とは、また異なった趣を感じさせます。
 「七百年近くも前の『平家物語』へ、時間をさかのぼることはできないが、その旧跡を訪ねれば、むかしの時間も帰ってくると考えられるかも知れぬ」、「たとえば六波羅などはあの清盛像のほかまったく昔のおもかげもないが、しかし、そこに立てばなにほどかの感慨がわき起こるのである」(「繪本平家物語」より)と述べる安野は、この作品を描くにあたり、京都、壇の浦、太宰府など平家物語の舞台となっているほとんどの場所を訪れ、その土地が宿している歴史の空気を感じたといいます。
 そうして作品には、戦場の猛々しい鎧武者達、また相対して静かな雰囲気が漂う山や海などが描かれました。それらは、少し離れた場所から眺めているような構図になっています。それぞれの作品は物語の緩急を見事に捉え、観る者をその世界に引き込んでいくことでしょう。
 安野は今春発行の「繪本平家物語カジュアル版」あとがきでイラク戦争に触れ、最後の一文で「平和の春が一日も早くくることを願わずにはおられません」と述べています。平家物語では、繰り広げられる源平の戦乱の世が描かれている一方、登場する武将たち一人一人が持っている人間としての慈愛の精神も合間に感じられます。全般を通じてたくさんの命が戦争の犠牲となっていく様子は、現代社会を見ているようでもあります。第二次世界大戦を経験した安野だからこそ感じ得ている戦争の悲惨さと平和への思いが、「平家物語」を通して表れているのかもしれません。
 この春、「繪本・平家物語」を観ていただいたことが、日本の古典文学に触れる糸口になればいいと思います。
 なお、春期、夏期展では一部内容を入れ替え37点を展示します。
 また、3月20日には「平家物語」を筑前琵琶奏者・田中旭泉さんの演奏で楽しむコンサートを開催します。是非併せてお楽しみ下さい。