〔平成16年度 安野光雅美術館 展覧会〕
 年間テーマ:開館3周年企画「安野光雅 絵のある人生」

冬期展示 会期:平成16年12月10日(金)〜平成17年3月9日(水)
     会期中休館日:12月29日〜31日
     開館時間:通常  9:00〜17:00(最終入館16:45)
     1月1日〜3日 10:00〜15:00(最終入館14:45)

・第1展示室
 展示ブース1「マッチうりのクリスマス」 11点(〜12/28まで)
 展示ブース2 「ヨーロッパの街から村へ」 〜12/29 38点 1/1〜 50点
 展示ブース3 「旅の絵本」 23点

・第2展示室  
「安野光雅のポスター」 原画22点、ポスター21点


(作品紹介)
「ヨーロッパの街から村へ」について
 安野光雅は日本をはじめ、ヨーロッパ各地を旅して、自然や街角などの風景をたくさん描いてきました。
 冬期展覧会では安野の風景画作品から九つの国を旅し描いた「ヨーロッパの街から村へ」シリーズを展観します。
 安野のスケッチの旅は、ほとんどの場合が制約された道順も日程もなく、地図を片手に自ら自動車を運転して行く自由なものだといいます。
 知らない土地に行き、どういう風景をスケッチする気になるのかと問われれば、「スケッチにでかけるのは、お嫁さんを探して歩いているようなものだ」(「絵のある人生」より)と答えます。
 そうして出合った風景は決して名所旧跡ばかりではありませんが、その出来上がった作品からは、とてもよい雰囲気の場所だったということが伝わってきます。
 安野は現在でも頻繁に国内外のスケッチをしに出掛けています。旅には愛用の折りたたみイスを携行し、心に留まった場所で腰をおろし、スケッチブックを開いて風景に向き合います。

 「スケッチして過ごす時間ほど、充実して豊かなひとときはない。絵がうまくいかなかった場合でも、なんとなく満たされた感じで道具を仕舞うのである。」(「画家たちの旅」より)と述べているように、仕事で描くということ以上に、自分の好きなことをやっている、充実した時間なのではないでしょうか。
 また、描かれた風景画には、その場の風景だけではなく、目にし、耳にしたもの、出会った人たちとの思い出が、日記のように刻み込まれているのだと思います。
 ヨーロッパの街や村を描いた優しい心象を感じる、水彩画をお楽しみください。


(作品紹介)
「旅の絵本」(デンマーク編)について
 地球上にはたくさんの人が住み、それぞれの国は歴史や独特の文化を持っています。安野は、それらの国を旅して、文化や習慣を学び、新しく出会った風景などを基にして、国ごとに絵本を描いています。
 その絵本が「旅の絵本」シリーズで、現在、1977年に発行された「旅の絵本(中部ヨーロッパ編)」をはじめ、ll(イタリア編)、lll(イギリス編)、lV(アメリカ編)、V(スペイン編)、そして今秋(平成16年10月20日)発行された、最新作「旅の絵本」(デンマーク編)の5つがあります。
 安野が、「わたしは(旅行中、飛行機の中で)着陸寸前の視点から世界を見たとき、そのような風景の中に、人間の歴史と自然と生活への共感を描きこんで絵本にしたいと切に思った」(「空想書房」より)と、このシリーズ作品を創ることに対する思いを述べているように、この絵本のどのページも、空高く飛んでいる鳥と同じ、高く広い視点を持って描かれています。
 それぞれの絵本は海から始まります。船から降りた旅人は陸地に到着し馬を手にし、町から町へ旅をします。旅人の進む行く手には一場面ごとに、人々の生活の様子が丹念に描き込まれています。
 各巻とも絵本の最後では、旅人は再び船に乗り海へ出て、次の国へ旅立っていきます。それを見ていると、国という枠組みを超え、地球上の道はみんなひとつにつながっているということを感じさせます。
 この「旅の絵本」シリーズ(l〜Vl)の魅力のひとつは、作品のあちらこちらに隠されたお話を探すことにもあります。作品には、安野が目にした風景や、心に残る人物や芸術・文学作品などが、安野ならではの機知に富んだアイデアで表現され、それらが背景として緻密に描き込まれています。
 「この本には言葉や文字がありません。でも、この本の中の人々が、何を思い何をしているのか、きっとわかってもらえるものと信じています。」(「旅の絵本ll」あとがきより)
と安野が述べているように、この作品には、国籍や言葉、生活習慣などが違っても人間の心には少しも違いがないという、万感の思いが秘められていると思います。

 それはこの作品のどの場面にも描かれているところの、生活の様子や、その風土の持つ温かな雰囲気からも感じることができます。この作品には、文明の発展が必ずしも人間にとって幸せなことではなかった、という作者の気持ちが込められているように感じます。
 「旅の絵本」には文字はありませんが、決して物語のない絵本ではなく、見る人により、物語を創っていく絵本と言うべきかもしれません。その国を旅行したことがある人は、自分の目にした景色の記憶と重なり、また、そうではない人も何かを発見したときに、心に触れるものがきっとあることでしょう。
 この度、新作絵本の原画として特にご鑑賞頂きたいのが「旅の絵本Vl」(デンマーク編)です。この作品の舞台は作家H.C.アンデルセンの故郷デンマークです。旅人の進む23場面の至る所に、誰もがよく知っている「マッチ売りの少女」や「人魚姫」などのアンデルセンの童話の世界が広がっています。いくつアンデルセン童話を見つけられるか探してみて下さい。



「安野光雅のポスター」 原画22点、ポスター21点